特定健診同時実施の1項目として胃がんリスク検診(リスク層別化検査)~西東京市の事例

永田外科胃腸内科院長 西東京市医師会 永田靖彦

西東京市における対策型検診は受診率が低迷しており、また胃部X線検査による集団検診では1年間に3万人以上の人が受診していましたが、わずか2~3人のしかも進行がんしか見つかっていないという状況でした。これを打破したいと、胃がんハイリスク検診(リスク層別化検査)導入の検討を始めました。まだ見つかっていない胃がん患者様は多くおられると想定され、当時胃バリウムのみでの検診状況で胃がん診療でしたので、ゴールデンスタンダードである内視鏡検査を何とか組み入れられないか考慮した結果です。

平成23年度から医師会独自の公益事業として開始、3年間は医師会が実施して4年目から市に移行しました。市内40~74歳の特定健診対象者全員に受診券を送付、2年間で全対象者に検査を行い、リスクが高い人たちには市内の医療機関で内視鏡検査を繰り返し受けてもらう、そのような流れになっています。

リスク検診はまだ死亡率減少効果が出ていないため公的には認められていません。そうなると「なぜ認められていないものを導入するのか」と言われることもあり得ます。当市では「特定健診時期のあくまで任意の採血の1項目として」実施しています。

しかしながら、私たちも検討を始めてすぐに導入できたわけではありません。広報活動や医療機関への周知、アンケート、受診券や帳票類の作成、10年以上さまざまな活動を行ってきました。消化器内科医による専門部会を立ち上げたり、医師向けの勉強会や講演会も数多く行いました。「行政を動かすには市民の声が欠かせない」と考えて市民公開講座も複数回開催しました。

平成22年には市の担当課と協力して検討準備会を立ち上げ、検診に関する相互理解、問題点を徹底的に検討し、胃がんリスク検診の導入に至りました。この検診を立ち上げるには、行政単独とか医師会単独でできるものではありません。たとえ任意型の検診であるとしても正しい運用と精度管理は十分に構築しなくてはなりません。市と医師会との協力体制は欠かせないと思います。

次に導入実績です。2011~2012年の初回導入時における受診者数は15,492人。受診率は42.3%でした。この2年間で見つかったがんは、早期胃がん38例、進行がん13例、その他のがん8例の合わせて59例でした。早期がんが占める割合は64.4%、X線検査の頃には考えられなかった数値です。隠れていたがんが多数見つかり、それだけレスキューできたということですから、この胃がんリスク検診のポテンシャルは非常に高いと実感しています。

この検診はフォローアップ検診です。一度内視鏡検査を受ければいいというものではありません。何年も繰り返して受けていく必要があります。西東京市では導入して5年経過したため、2回目の内視鏡検査をした人たちを追跡したところ、早期がんが複数例見つかりました。定期的な内視鏡検査が欠かせないことが推察されます。言い換えれば、このフォローアップが定着すれば多くの早期がんが発見され、早期発見・早期治療による費用対効果も期待できるのではないか、と感じています。

参考文献
Yasuharu Yamaguchi Yasuhiko Nagata Ryuuta Hiratsuka Yoshihiko Kawase Tatsurou Tominaga Shunji Takeuchi Shinya Sakagami Shusei Ishida:Gastric Cancer Screening by Combined Assay for Serum Anti- Helicobacter pylori IgG Antibody and Serum Pepsinogen Levels – The ABC Method. Digestion 2016;93:13–18

永田靖彦他:胃がんリスク検診(ABC検診)マニュアル 胃がんを予知して,予防するために第2版 南山堂 認定NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構 編

潰瘍性大腸炎・クロー...

トピックス一覧に戻る

胃X線検査は全廃。胃...

ページ上部へ戻る